高次脳機能障害の深刻度について
1|損害賠償制度
高次脳機能障害には、多くの症状が伴い、日常生活に深刻な影響が及びます。
しかし残念なことに、高次脳機能障害は社会では正確には理解されていません。
特に、別表第2第9級の高次脳機能障害程度では、外見上判断できないのはもちろん、本人の努力次第で通常の日常生活を送ることも不可能ではありません。
しかし、本人も気付かない内に、認知障害、行動障害、人格変化等が生じているのです。
それらの症状に伴い、被害者の生活には何らかの支障が生じています。
だからこそ、せめて金銭的な損害だけは填補しようというのが、損害賠償制度なのです。
自賠責保険で後遺障害として認められる高次脳機能障害の内、最も軽いものは、別表第2第9級10号に該当します。
別表第2第9級には、「両眼の視力が0.6以下になったもの」、「1耳の聴力を全く失ったもの」、「1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの」などの後遺障害が定められています。
そして、別表第2第9級の後遺障害に対しては、自賠責保険上は後遺障害慰謝料としてだけでも245万円が支払われます。
これは何も、高次脳機能障害だけが厚遇されているというわけでは決してありません。
それだけ、高次脳機能障害が重大な後遺障害であるということなのです。
表1
等級 | 後遺障害 | 保険金額(自賠責基準) |
---|---|---|
別表第1第1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 4000万円 |
別表第1第2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 3000万円 |
別表第2第3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 2219万円 |
別表第2第5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 1574万円 |
別表第2第7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 1051万円 |
別表第2第9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 616万円 |
2|弁護士選びは正当な損害賠償を得るため
残念なことに、専門家である弁護士さえも、高次脳機能障害を正しく理解している者は多くはありません。
高次脳機能障害を発症した交通事故被害者にとって、弁護士選びは、正当な損害賠償を得るために乗り越えねばならない第1の関門と言えるでしょう。
ただ、表1のような文言を読んだだけでは、仮に高次脳機能障害を発症したとしても、一体自分がどの等級に該当するのか、見当もつかないことでしょう。
この点、自賠責保険においては、高次脳機能障害認定システム確立検討委員会によって具体化された表2の基準を用いて等級が判断されています。
ただ、表2を見ても、高次脳機能障害の等級を一義的に判断することは困難です。
結局のところ、ケース・バイ・ケースと言わざるを得ず、高次脳機能障害の認定に当たっては、診断した医師、判断を下した裁判官、委任した弁護士が大きなウェイトを占めると言わざるを得ないでしょう。
表2
等級 | 後遺障害 |
---|---|
別表第1第1級1号 | 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介助を要するもの |
別表第1第2級1号 | 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲が自宅内に限定されている。 身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの |
別表第2第3級3号 | 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。 また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。 しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
別表第2第5級2号 | 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。 ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。 このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
別表第2第7級4号 | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
別表第2第9級10号 | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの |
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