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脊髄損傷の裁判例について

1|画像がなければダメ?

脊髄損傷の立証において、軟部組織の異常所見に優れたMRI検査は有力な証拠となります。

しかし、不完全麻痺にとどまる不全損傷の場合、画像所見に現れない場合もあります。

では、MRIなどの画像がなければ、脊髄損傷は否定されてしまうのでしょうか。

この点について、

MRIが有力な診断方法であることは勿論であるが、補助的な診断方法であり、不全損傷のような場合には、画像上所見が出ない場合もあり得る。鑑定人は、画像上所見がなくとも頸髄損傷であるケースを経験していると述べている。

東京地判平成12・5・16

として、必ずしも画像所見が必須ではないとしました。

そして、他の検査結果等から、頸髄損傷を認めました。

また、被告が、原告が証拠として提出したMRIでは脊髄損傷を読み取れないと争った事案で、

MRIの画像表示は、脊髄内の傷害領域を描写するものとして有効なものであるが、組織・細胞そのものの表示ではなく、またときとして解像が困難なこともあるから、脊髄損傷の判断に当たって、絶対的なものとはいえない。比較的軽度の頸髄損傷の場合には、必ずしもMRI上の所見が得られるとは限らない。として、仮にMRI上の所見が認められないとしても、これをもって脊髄損傷を否定することはできない

大阪地判平成20・6・30

とし、事故態様が頸髄損傷の発生機序として整合することやSEP検査の結果等も考慮し、頸髄損傷を認めています。

他にも、画像所見がなくても他の検査や症状の整合性等を検討している裁判例は複数あります。

MRI等の画像は、脊髄損傷の客観的な裏付けとして、有力な証拠になることは確かです。

ただ、裁判例上、必ずしも「画像がなければダメ。」とはされていないのです。

裁判で脊髄損傷の有無が争われる損傷形態として多いのは、中心性脊髄損傷の事案です。

中心性脊髄損傷は、何らかの運動や知覚が残っている不全損傷の一種であり、その不全損傷の中でもっとも頻度の多い損傷です。

中心性脊髄損傷は、MRIが唯一の画像所見とされます。

しかし、不全損傷ではMRIによっても所見が得られない場合もあるのです。

では、そういった明らかな画像所見がない場合など、脊髄損傷はどのように判断されるのでしょう。

この点について、次の裁判例を参考にみていきましょう。

2|画像所見以外に重要な事情は?

画像所見などの検査結果以外に、裁判例上、事故の態様が脊髄を損傷するようなものであったか、事故後の症状が脊髄損傷と整合するか、といった点が考慮されています。

脊髄損傷が否定された案件で目立つのが、事故後の症状が脊髄損傷の症状と整合しないというものです。

脊髄を損傷し麻痺が生じた場合のその後の経過は、全く良くならないか徐々に良くなるかです。

つまり、だんだん悪化するということは通常ありません。

事故後の麻痺等の症状が徐々に悪化していた事案で、

外傷性脊髄損傷においては、外傷直後に最も重い症状が現れ、完全麻痺のまま永続するか、部分的に改善して不全麻痺を残すか、あるいは治癒するという経過を辿るものであり、反復して外傷を受けた場合を除き、時間経過とともに症状が悪化する進行性脊髄損傷とでもいうべきものはない

高松高判平成13・7・26

と脊髄損傷の症状の特徴を述べ、

  • 被害者が入院中頻繁に外出や外泊をし歩行障害があったか疑わしいこと
  • 症状の訴えが時間の経過とともに多彩になり、悪化していること

などから、脊髄損傷を否定しました。

また、

頸髄損傷の症状の経過について、

  1. 受傷後早期(2、3日以内)に最も強い麻痺症状を呈し
  2. その後は全く改善することなく経過するか、改善傾向を示すかのいずれかであり
  3. 慢性期になると病状は日によって変動することがある

また、脱臼や骨折を伴わない非骨傷頚髄損傷の特徴は、

  1. 高齢者などの加齢性変化による脊柱管狭窄状態が素因として存在する患者に認められる
  2. 頸部の過度の後屈が強制されて受傷することが多く、前額部、頬部、顎部などの顔面の挫傷を伴うことが多い
  3. 麻痺としては当初四肢麻痺のこともあるが、麻痺は上肢中心に認められた特に手指などの上肢遠位に強く、下肢の機能は急速に回復することが多く、最終的には上肢優位の麻痺が遺残することが多いことを特徴とする中心性頸髄損傷の麻痺型を呈することが多い

東京地判平成18・10・26

とし、頸髄損傷の一般的な症状の経過と非骨傷頸髄損傷(中心性頸髄損傷もこれに入ります)の場合の症状の特徴を示し、

  • 原告の麻痺症状が経過中に明らかに悪化していること
  • 原告には脊柱管狭窄状態がほとんど認められないこと
  • 考えられる損傷部位の障害から生じる症状以外の障害も出ていたこと

などから、脊髄損傷を否定しました。

特に、中心性脊髄損傷の場合、MRIでも所見が得られるとは限らず、症状の程度も様々ですから、損傷の有無が特に争いになります。

この中心性頸髄損傷に関する最近の裁判例に、東京地判平成23・10・20があります。

裁判所は、

  1. 中心性頸髄損傷は、頸髄の完全損傷(麻痺)には至らない不全損傷であって、下肢・膀胱・直腸に分布する神経は周辺部寄り、上肢に分布する神経は中心部寄りを走行していることから、中心部が損傷すると、下肢よりも上肢を支配する神経がより強く損傷される。そのため回復の順序は、下肢・膀胱症伏から始まり上肢症状は遅れる。また、
  2. 予後は良好
  3. 外傷性病態であり、受傷直後から48時間以内が最重症である。
  4. 手指の巧緻運動障害を生じる。
  5. 膀胱排尿筋と尿道括約筋との協調運動障害を来す核上型神経因性膀胱(仙髄より上の神経の障害による蓄尿、排尿障害)がみられる。
  6. 一定程度以上の脊髄損傷が発生した場合は、MRI画像等で脊髄内輝度変化が見られるなどの特徴がある。

と中心性頸髄損傷の一般的な症状を挙げ、本件では、

  • 事故後のMRI等によっても頸髄損傷の所見は全く認められておらず、入院当初上下肢ともに麻痺症状はなく、事故から1週間後から下肢の筋力低下を訴えるに至ったこと。
  • 上肢については、ある程度回復し、格別リハビリを行っていないのに対し、下肢については、筋力低下が顕著であり、リハビリによって松葉杖歩行が可能な状態にまでは回復したものの、それ以上の改善がみられていないこと。
  • それに加えて、原告の排尿障害ないし蓄尿障害は核上型神経因性膀胱ではなく、核・核下型神経因性膀胱(仙髄以下を損傷した場合に当たる)に該当する。

東京地判平成23・10・20

ことなどから、中心性頸髄損傷を否定しています。

中心性頸髄損傷の場合に、上肢に麻痺が強く出て、回復も下肢から始まり上肢が遅れるという点は、東京地判平成18・10・26でも挙げられており、主要な特徴です。

脊髄を横から切った状態で見たとき、上肢につながる神経は中心に、下肢や膀胱につながる神経は外側よりに走っています。

そして、通常の脊髄損傷では、外側が損傷されることから、下肢麻痺が酷くなります。

他方、中心性脊髄損傷は、脊髄を横から切った状態で見たときの中心の辺りの損傷です。

そのため、脊髄の中心の方を損傷される中心性脊髄損傷では、運動障害や感覚障害は下肢に比べ上肢に強く生じ、回復も下肢や膀胱が早く、上肢が遅れるのです。

本件では、当初上下肢に麻痺がなく、下肢に力が入りにくいといった症状を訴えたのが遅かったことや、下肢よりも上肢が早く回復した等、その症状が中心性脊髄損傷に沿わない経過を辿っていることなどが、脊髄損傷を否定する大きな要因となっています。

裁判例の中には、被害者の症状の中に一般的な脊髄不全損傷の症状と整合しないものがあることを認めつつ、事故態様や衝撃の大きさ、骨折箇所等から脊髄不全損傷を認めたものもあります(大阪地判平成20・7・31)。

ただ、この判例も一致する症状についてもきちんと認定し、脊髄不全損傷の一資料としているので、決して症状を軽視しているわけではありません。

3|明確な画像所見がない場合のポイント

したがって、中心性脊髄損傷のような脊髄の不全損傷の認定には、事故後の症状の経過が重要なポイントになっているといえます。

受傷後3日を経過しても麻痺の症状が現れていなかったり、麻痺の症状が悪化していたりすると、脊髄損傷の存在に疑問を抱かれることになってしまいます。

また、発症形態として多い中心性頸髄損傷では、下肢よりも上肢の麻痺が先に良くなっていたりすると、加害者側のつっこみどころになります。

弁護士が脊髄損傷を主張する場合、必要な準備として事故直後から症状固定にかけての症状が、損傷形態や損傷部位と合っているのかどうかについてチェックします。

そのチェックの重要な資料は、診断書やカルテ等の診療記録ですが、当然、ある程度の医学的な知識が求められます。

そのため、交通事故の経験が豊富で、脊髄損傷の症状について詳しい弁護士に頼むことが、適正な賠償を得るスタートになります。

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